―1987年 あさひ通信より―

あさひ設立から10年…たくさんの良い人達にめぐり会えて、作業所の経営もようやく軌道に乗ってきた。
青年たちもたくましく成長してきた。若干の時間的余裕ができたのを機に、「あさひ通信」を発行。

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このたび、当作業所においても、10年目にして‟あさひ通信”を発行できる運びとなりました。細く長く、皆さまと会話ができる通信に育てあげていきたいと願っております。まずは創刊号、普段着でスタート。

あさひの現状
 春の訪れを待って始まった椎茸、しめじの植菌、鶏糞2500袋の袋詰めとその出荷、採卵鶏のヒナ1000羽の導入、そして1反歩の田植え等々…一連の作業が無事に終了して、ようやく平常の「あさひ」に戻りました。気づいてみるともう6月、作業所周辺はすっかり深い緑におおわれ、夜になると近くの水田からカエルの合唱がにぎやかに聞こえてきます。
 創刊号では、最近あさひで起きた色々なニュースを皆さまにお知らせする予定でした。しかし、どこをみてもニュースにふさわしい材料が見当たらないのです。さて、困りました…。でも、それで良い事に気がつきました。何故ならば、毎日が平穏無事に過ぎている事の証明に他ならないのです。
 青年たちが日増しに成長し、最初の頃無理かなと思われた各種作業を、今では淡々とやり遂げてしまう程力が身につきまし、私生活場面においても、病気、怪我、喧嘩などが殆どなくなり、O君は懸命に花壇作りを、K君は目下ワープロに挑戦、そしてS君はウイスキーの晩酌に生きがいを感じ、といった具合にそれぞれが、自らの生活スタイルを確立しつつある現実を見た時に、「これでいいのだ」と思えてくるからであります。
 開設当初めざした、健常者が営む「ごくあたりまえの生活」がようやくあさひの青年達にも可能になりつつあります。
 あさひ10年の取り組みを振り返る時、つくづく青年達の頑張りに感謝すると共に、折に触れ何かと励まし支えてくださった多くの関係者の皆様に改めて敬意を表する次第です。ありがとうございます。

引き売りをやってみて
 今年早々から、タマゴ、ハム、椎茸など、自家生産した物を週に1,2度引き売りしています。はじめは、近所の2,3件に配達していた物が、現在では、病院、保育園、福祉施設なども含めて、タマゴにして週に100パックも買っていただけるようになりました。
 私は、「訪問販売」でもなく、単なる「配達」でもなく、少し昔風ですが「引き売り」という表現が好きです。「引き売り」には、地道にコツコツとお客さんへと出向き、会話を通して物と心を買って頂くイメージがあると思うからです。私は話すことが好きです。お客さんもそんな私を通して買ってくださいます。物を買う時、会話が欠如しているのが今の世の中なのでは…などと、自分が物を売る立場に立ってふと思います。単に物を売るのではなく、それプラスαの何かを大切にしたいと思います。「会話するのも代金のウチ」などとチャッカリしたことも考えて、頑張っています。

働く彼ら―Oさん(24歳)の巻―
 あさひ青年9名中、3番目に古く、昭和55年4月に就職しました。
 大変オシャレで、外出する時はビシッときめていきます。18~22歳頃までは、黒のサングラスにピンクのシャツや、黒で上下を統一したり、ツッパリスタイルでしたが、現在は服装、気持ち共にぐっと落ち着いてきました。
 5月には、父親が亡くなり、今は寂しさをこらえている時期です。母親は救護施設に入所しているため、これからは一人強く、逞しく生きていかなければならなりませんが…。いつもニコニコ、力を出し惜しみしているのが残念です。
 性格は明るいのですが、思いやりがないので、彼女はまだいません。

〔6月の主な行事〕
飯盛山ハイキング―7日(日)-
 少し遅くなりましたが、春のハイキングは八ヶ岳山麓にある飯盛山に決まりました。今回は、M君ご姉兄さん、元指導員のKさん一家も加わり賑やかになりそうです。今までの指導員中心の企画ではなく、青年達の発案、企画であり、多少不安もありますが、彼らの主体性を尊重して、まずは実行!ちなみに、鶏と豚の管理がありますので、いつものことながら日曜勤務者が留守をしっかり守ってくれます。

 

 

【あさひ創立20周年記念誌より】

1981~1986年

 ボランティアの皆さんや作業所を訪ねてくださった方々の「ゲストハウス・ボランティアハウス」。丸太を組み立てた手作りの建物。左端はお風呂の煙突。当時は薪でお湯を沸かしていました。

 

 ゲストハウス北側部分には、売店を設置。町営グラウンド利用者さんや近隣の方々むけに、作業所の農産物やアイスクリームを陳列販売していたが、お客さんはほとんど来なかったという。

 

 あさひで生まれた子豚を聖ヨハネ学園養豚班で肉豚として肥育し、ぐるうぷはこびやさんのミート工場で精肉加工して、東京の消費者の皆さんに販売するという態勢が確立した。益々豚の飼育に熱が入っていた時期。

 

 《合板カット作業の導入》昭和55年3月大森パンチ工業(株)の下請け工場として導入。危険を伴い且つ納期に追われる作業であったが、農業部門・工場部門の2本柱での運営の基礎を作った。
養豚やシイタケ栽培作業を苦手とする青年たちが、あさひでのポジション獲得できる場としての位置づけにもなった。
自称工場長として、材料準備、合板カット作業はもちろん、日々変動する在庫が全て頭に入っているKさん!Kさんの人生の最盛期でもあるという…?

-あさひ創立20周年記念誌より―

 

 

 

【あさひ創立20周年記念誌より】

昭和59年(1984年)12月の朝日新聞記事より。
この当時、オガクズは豚舎や鶏舎に敷くのになくてはならないものでした。

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地道に福祉活動を続ける施設や団体の活動の一助にと、朝日新聞東京厚生文化事業団が贈る「朝日福祉設備助成金」の59年の交付団体が決まり、県内では心身障害者らの職場「あさひ福祉作業所」が選ばれ、百万円が送られた。養豚や養鶏に必要なオガクズをつくるオガ粉製造機の購入にあてられる。
 福祉施設や養護学校を出た知的障害者らを引き受ける職場は少ない。そうした障害者を雇用し、働くことで人間的に成長し、自立を図ろうと、7年前に県の福祉事務所を辞職した島充弘さん(41)が設立したのが、あさひ福祉作業所である。
 現在は、年間50頭の子豚出荷、採卵鶏は三千羽飼育し、日産百キロの卵生産。シイタケ栽培の方も原木千二百本保有し、年間四千キロを出荷するまで成長してきた。事業の拡大とともに、自習生として知的障害者を9人雇用。指導員も二人いる。
 最近では、養鶏、シイタケ栽培、養豚のほかに、合板カット、機械の組み立て作業が加わった。しかし、作業所は無認可施設で制度上の厚遇はない。作業所を始めたころは、経済状態も火の車だったが、ここ数年、何とか赤字の出ないところまでこぎつけた。
 また、障害者も経験を積む中で、作業所の経営を支える「なくてはならない労力」に変わってきた。障害者の自立を図るため採用した「月給制」「週休制」「8時間労働」も定着している。
 今回の助成金で購入するオガ粉製造機は、豚舎や鶏舎の敷料として、なくてはならないオガクズを作り出す。今までは、近隣の製材工場等からオガクズを購入してきたが、最近の不況のあおりや農家が肥用に利用していることもあって、入手しにくくなってきている。「今後の運営を考えるとぜひとも必要」(県福祉協議会)な機会だった。
 「福祉という前に、働いて採算を合わせなければならない。」という島さん。同作業所での事業を通して障害者の勤労意欲が高まり、自立心が生まれてくる。まだまだ困難な道が続いているが、島さんのいう「手作りの福祉」は確かなものになりつつある。

-あさひ創立20周年記念誌より―

 

 

 

【あさひ創立20周年記念誌より】

昭和56年(1981年)11月の記事より。
当時の様子が想像できます。

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「住居と自立」 島充弘

作業所では現在6名の障害者が鶏と豚の飼育、しいたけ栽培、テープレコーダーの部品組み立て作業に取り組んでいます。毎日目の回る忙しさが続いていますが、彼らは愚痴ひとつこぼさず、元気いっぱい作業に励んでいます。
 作業所の特徴を敢えてあげれば、次の二つに要約できるでしょう。
まず第一に、あさひ福祉作業は制度上無認可の施設。従って、公的援助は一切なく、卵やシイタケの売り上げで職員も、障害者も共に生活する私的運営施設です。6名の仲間はそれぞれの分野での立派な戦力です。作業の結果が給料に影響するので、いきおい彼らも一生懸命になさざる得ないのでしょう。
第二に、私生活部分でのプライバシーの確保を最大限に尊重し、原則的に一人一部屋の住居がある事です。作業所は施設ではなく、君たちの職場なのだという雰囲気づくりを続けてきたわけですが、最近この意識が定着してきたようです。
 作業所で働く6名の障害者のために、世帯用住宅1棟、単身者用住宅4棟があります。家畜の管理の必要から、住宅は作業所敷地内にあり、鶏や豚の鳴き声とともに目を覚まし、シイタケの香りの中で生活しているわけです。世帯用住宅には、昨秋結婚したO君とMさん夫婦が居住しています。結婚当初は財布が一つになることが理解できず、これが原因でトラブルが絶えませんでしたが、最近は楽しく新婚生活を過ごしているようです。居室は台所兼食堂の4畳間と居室兼寝室の8畳間です。朝晩の食事は二人だけでとり、家庭の雰囲気が漂っています。なお、風呂及びトイレは単身者と共用です。
 夕食後のひと時、仲間達がO君夫婦の家に集まり、Mさんの用意したお茶菓子を食べながら雑談に花をさかせます。私達夫婦は彼らにとってけむたい存在ですが、仲間同志の語らいには遠慮も気がねもいりません。
 単身者は、トンガリ屋根の一戸6畳間に居住。食事は三食とも代表者夫婦と一緒ですが、日曜日には自炊生活をしています。月末になると財布の中身も乏しくなり、インスタントラーメンで間に合わせることが多いようですが、それでも結構楽し気に調理台に向かっています。
 U君は34才、分裂病を合併、18才で発病し、10年間精神科の病院で入院生活を送った後、作業所に就職し2年が終わろうとしています。就職当初は、トイレの始末や洗面等の基本的な生活習慣が未確立で、作業以前の段階でしたが、今ではニワトリ千羽の給餌を引き受けるまでに成長しました。

 左上のバラック小屋はしいたけ発生舎。後方の畑は現在の町営グラウンド。

 現金収入をと始めた室内作業。

 現在もあるトンガリ屋根のプレハブ宿舎。93年に寄宿舎が完成するまでは、この6畳一間のプレハブ住まいが彼らにとっての「城」でした。

-あさひ20年記念誌より―

【あさひ20周年記念誌より】

昭和55年(1980年)の新聞記事の掲載です。

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今月は心身障害は雇用促進月間。山梨県高根町の島充弘さん(36)は、障害のある子らにも生きる喜びを―と、知的障害者4名と作業に汗を流している。
心身障害者の社会参加は、何かと政治問題になりながらも難しいのが実情。知的障害者の場合は特にそうだ。
「誰かが手をさしのべてやらなければ、ますます社会から隔離していく」と彼らを雇い入れ、シイタケ生産、養豚、養鶏に取り組んでいる。
もっと規模を大きくして20人くらいの”福祉農場”を築くのが夢だ。
島さんが始めたのは3年前。それまでも県の福祉事務所に勤務するなど福祉関係の仕事をしてきた。
しかし「いずれは自分で福祉施設をやってみたい」と思っていた。
だが敷地は60アール程度しかない。そこを最大限に活用できるものをと、シイタケを主体に子豚生産を組み合わせ、それに卵ぐらいは自給しようと採卵鶏を少し入れた。
現在の経営規模はシイタケが2万本、子豚生産が母豚の数で25頭、それに採卵鶏3百羽である。
これを奥さんと4人の障害者で経営している。4人はすべて男性、19才から30才まで。県の福祉施設や民間企業にいた人たちである。
仕事はみんなで分担している。こみいった仕事はやはり無理なので、畜舎の清掃や給餌、シイタケの収穫などが主な仕事。
食事などは皆一緒だが、その他はなるべく自由にしている。自立精神を高めるためだ。そのため、小さいながらも住宅は一人一棟づつ。給料もきちんと決めている。
週1回交代で休むが、買い物をするなど自由に生活している。
彼らの表情は明るい。それについて島さんは「汗を流した結果が、シイタケの芽や豚の赤ちゃんに、鶏の卵という形に現れてくる。その喜びが生きがいになっているようです。それに働いた結果が一定のお金になり、自分なりの生活ができるところに喜びを感じています。やはり、社会に参加させて自分で生きていく喜びを与えてやるべきだと思います。」と話している。
今後、少しづつ規模拡大して現在の4人をリーダーにした、20人くらいの”福祉農場”を築く計画で、知的障害者らと泥まみれになっている。

 

-昭和55年新聞記事 「あさひ創立20周年記念誌より」-

【あさひのあゆみ】

NPOあさひは、前身「あさひ福祉作業所」として開所してから42年となります。

この度、ホームページがリニューアルしたのを機に、これまでの《あさひのあゆみ》を振り返ってみたいと思いました。
しかしながら、40年あまり、広い敷地内での移転・移動もあり、過去の資料を探し当てるのにも苦戦しています。
まずは、【あさひ創立20周年記念誌】を紐解くところから始めます…

少しづつ更新してまいりますので、どうぞゆっくりとご覧いただけたら幸いです。

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1997年(平成9年)、20周年を迎えた《あさひ》

たくましく成長している青年達と共に生きている「喜び」と「自信」、そしてこれからの決意が代表の言葉からも感じられます。

 

-あさひ創立20周年記念誌-

 

-代表 島 の挨拶文より―

 

グループホームあさひテレホーム
《共同生活援助事業》 お互いの個性を認め合いながら、一人ひとりが自分のペースで自立した生活を大切にして「共に暮らす家」を目指しています。
多機能型事務所ぶーこっこ
《就労継続支援B型事業》《生活介護事業》 誰もが人として本当に大切にされ、「生きがい」「働く喜び」を感じながら、地域社会の中で共に笑顔で過ごす場を目指しています。
パン工房 ぶーこっこ
あさひの平飼い卵とこだわりの素材を使って、丁寧に作り上げた焼き菓子や天然酵母パン。自然を思うこだわりの商品。「NPOあさひ多機能型事業所の生産販売所」です。

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